長い付き合いになったね
死ネタですけど、死んでいないソロバルです。
長い付き合いになると思ったのにと対になる話です。
張りのない、シミの出たソロモンの手を、バルバトスは優しく握った。初めて会ったときは、彼が16か17のときのため、もう60年ほどの付き合いとなる。そう考えると随分と長い年月を共に過ごしてきた。
ソロモンの視線がバルバトスに向けられる。
「ああ、無理しなくていいよ。楽にしていてくれ」
バルバトスはポツポツとソロモンへ話しかけた。初めて会ってから戦いの日のこと、犠牲を多々払い、勝ち取った平和な日々のことを。少ない個人の面会時間の中でも、どうしても確認しておきたかった思い出だ。
「大変だったけどね、過ぎてみると楽しかったことも沢山あったんだ。大人になったキミに悪いことを教えたときもね」
「なにそれ」
ソロモンに弱々しい微笑みを向けられる。
バルバトスはその表情がよく見えるように頭を撫でた。
「初めてお酒を呑んだとき、むせてしまっていたっけ。結局、それからもお酒は呑めないままだったね」
本当のところは、ソロモンが酒を呑まなくなったのは、有事のときに素早く動けないことを恐れていた部分の方が大きかったのだろう。その証拠に、平和になってからは、バルバトスが勧める酒を少しだけ嗜んでいた。しかし、それは言わない。無粋な話だ。
「本当にキミとは長い付き合いになったね。キミがシワシワのおじいちゃんになってしまうとこなんて、想像できなかった」
ヴィータで、老人と言われるような高齢になる者はほんの一握りだ。様々な幸運が重ならないとそうはならない。
バルバトスは耳に髪をかけ、ソロモンに唇を寄せた。そのときに、そっと抱き寄せられ、身を任せる。自身の熱がじわりと伝わっていくのを感じた。
「俺はとても楽しかったよ。キミはどうかな?」
「俺も、同じ」
「良かった。さて、そろそろ時間だ」
バルバトスはソロモンの手を離し、体を起こした。これからは他の人の時間だ。皆に慕われてきた彼の時間をこれ以上独占できない。
寂しそうなソロモンの表情を見て、初めて、バルバトスは自分が不死性を手放さない選択をしたことを後悔した。もし、あのとき、バエルと共に不死性を手放していたとしたら、そんな仮定の話が頭をよぎる。
身を貫くような痛みを無視して、バルバトスはソロモンに再会を祈る挨拶を向けて部屋から出た。
会うことはもうないだろう。そう理解していても、目を逸らしていたかった。