長い付き合いになると思ったのに
バルバトスが握ったソロモンの手はまだ若く、握り返す力は弱かった。そんなソロバルです。
少しでも意識がこちらを向くようにと、強く握ったソロモンの手を、握り返す力が弱まった。どれだけ声をかけ、フォトンを回すよう頼んでも、もうそんな力は無いようだ。
「まだだ。諦めるな!」
喉が枯れるのも厭わず、バルバトスは叫び続ける。少しだけ目に光が戻り、視線がこちらに向けられたが、すぐに虚ろな瞳に戻った。
敵のメギドと交戦中、不意を打たれてソロモンは幻獣に攻撃された。近くにいるバルバトスが咄嗟にソロモンを突き飛ばしたおかげで即死は免れたが、状況は芳しく無い。ブネが応急処理として止血した布にどんどん血が広がっていた。
こういう時、医療技術を身につけてこなかったことを後悔する。もし、自分に医療技術があれば、大怪我を負って弱っていくソロモンの命を繋ぎとめることが出来ただろう。
「あと少しで、バティンやアンドラスが来る。しっかりするんだ」
自分に言い聞かせるためにも話しかけ続ける。
なんとか仲間が一人、この包囲を潜り抜けて助けを呼びに行ったが、正直なところ、要であるソロモンが動けないこの状況では、助けが来る前に全滅する可能性がある。
「長い付き合いになると思っていたのに。ここで死んではダメだ!」
「オマエ、に……」
指輪が光り、バルバトスにフォトンが回された。
ソロモンの視線はバルバトスの怪我に向けられている。ソロモンほどでは無いにしろ、バルバトスも怪我を負っていた。
バルバトスの表情が歪む。ソロモンの意図はわかる。なにせ、それなりに付き合ってきたのだ。
「ああ、わかったよ。キミの判断は無視させてもらう。俺たちには、……俺にはキミが必要だ」
絶望に染まるソロモンの表情を無視し、バルバトスはソロモンにメギドの力を向けた。
そこから先は記憶にない。意識が戻ったときには、バルバトスは医務室のベッドの上にいた。
自分の生存を確認して、バルバトスは何とかあの場をしのぎ切れたのだと知り、安堵した。詳細は聞く必要があるが、瀕死だったであろう自分を回収する余裕があるならば、無事収められたに違いない。
横のベッドから、人が起き上がる気配がした。バルバトスはそちらを見る。そこには、立ち上がり、心配そうにバルバトスを見ているソロモンがいた。
バルバトスはソロモンの手を握る。返す力は確かにあった。
「ソロモン、あの後はどうだった?」
「みんな無事だよ。俺が1番重症なくらいだ。事件も解決した」
「それは良かった。じゃあ、心置きなく休めるね。ねぇ、ソロモン、少しだけ一緒に寝よう」
バルバトスはソロモンをベッドに招き寄せた、ベッドの端に移動し、入ってきたソロモンを抱き寄せる。ソロモンの体は暖かい。
「危険に晒してごめん」「自分の命より他人の命を優先しないでくれ」と、言いたいことはいくつもあったが、まずはソロモンの無事をこの身で感じていたかった。