おめでとう
何気ないことで何かが始まるモンモンなソロバルです
「そろそろ自分の誕生日か」と、新生グロル村の復興作業を手伝いながら、ソロモンは自身の誕生日を思い出してた。少しだけだが、嬉しくなってしまう。誕生日は楽しい思い出がたくさんある。それを思い出し、ソロモンの心は暖かくなった。
祖父が生きていたころ、ソロモンは毎年盛大に祝われていた。1ヶ月以上前から用意が始まり、最後の方はうっとおしく感じていたが、今となっては何故うっとおしく思っていたかと後悔が募る。他人から祝われることは得難い幸運なことだ。その証拠に、祖父が死んでからはとんと祝われることがなかった。
ひとしきり懐かしさに身を任せた後、ソロモンは止まっていた作業を再開した。あとで少しだけお菓子をもらい、自分自身を祝おう。ソロモンはそう決めた。そうなると自然と作業の手が進み、体が軽くなる。
今日の作業が終わり、支給された料理の他に少しだけお菓子を貰うと、その帰りにソロモンはバルバトスに捕まった。
「やあ、ソロモン、お菓子を貰うなんて珍しいね」
「バルバトスもいるか?」
いつものお礼にと、ねだった量より多くお菓子を貰っている。分けても、バルバトスの満足する量にはなるだろう。
食事を始めるために座ると、ソロモンは貰った焼き菓子を半分に分けた。長期保存用に作られた物で、それは固く小さい。
ソロモンが差し出した菓子を、バルバトスはそっと差し戻した。
「俺はいいよ」
「遠慮することないのに」
「いや、今日くらいは独占するといい。誕生日だろう? 誕生日おめでとう、ソロモン」
思わず見惚れてしまいそうになるほど美しい微笑みと共に、ソロモンは祝いの言葉を向けられた。
ソロモンは予想外のことに瞠目する。自分の誕生日をみんなに教えた記憶はない。まさか祝ってもらえるなんて。
ソロモンは自身の胸に右手を当てて、浮かれてしまっている自分を落ち着かせた。そのせいかバルバトスの言葉が頭に入ってこない。左手を握られてようやく、ソロモンはバルバトスへ意識を戻した。
「どうしたんだい? 急に黙りこくってしまって」
「……俺、バルバトスに誕生日を教えたかな?」
「うん、王都へ行くまでの旅路で聞いたよ。」
「全然記憶にないや」
「それは悲しいな、俺は楽しみにしていたのに」
「バルバトスが?」
ソロモンは在りし日の思い出に身をはせる。自分の誕生日を祝ってくれる人は、いつも自分より嬉しそうだった。
「もちろん。生まれてきてくれてありがとう。ソロモン王としてだけじゃなくて、キミ個人にも言っているよ」
「……ありがとう」
ソロモンは目元を抑えた。胸の奥から熱いものがこみ上げ、手を伝って落ちていく。
「さて、俺からのプレゼントはあとであげよう。そろそろみんなが来るだろうからね」
「みんなが?」
「ああ、俺が言いふらしておいたからね」
バルバトスはソロモンの手を退かせ、ポケットから出したハンカチでそっとソロモンの目元を拭った。遠くから騒がしい声が聞こえてくる。おそらく、それを聞いての判断だったのだろう。
何かが自分の中で始まった音をソロモンは聞いた。