教えてくれなかったこと

寝込みを襲うモンモン

ソロモンは隣で寝ているバルバトスに覆い被さった。情事の後、簡単に片付けただけでほぼそのまま寝たので、お互い裸である。そのことが、行為に近い感覚をソロモンに喚び起させた。

バルバトスの寝顔は、起きているときとは違う美しさがあった。起きている彼は生命力のある強さを感じるが、寝ている彼は作り物めいた容貌で、あまりの精密な美しさに、呼吸を確認しないと生きていることすら疑わしくなる。

そんな彼に、ソロモンはキスをした。額にキスし、瞼にキスし、頰にキスする。そして、唇にもキスをした。たまらず唇を舐めてしまったが、起きる気配は無い。そのまま覚悟を決めて、ソロモンはバルバトスの首筋にキスをした。

あまり上品ではない話だが、キスマークの話をソロモンは聞いた。相手は自分のものだと、体に刻みつけるために残すのだと言う。真偽はいかほどか知れないが、その衝動は納得することができた。自分自身では付けられない場所にあるキスマークは、誰かがいることを暗に主張できる。

ソロモンは頸動脈あたりに口付けた後、臆病な己が顔を出して、位置を下げた。喉仏に近い鎖骨の上あたりに位置を定める。

ソロモンは視線を上にやり、バルバトスの様子を確認した。何度か緩く肌を吸っているが、起きる気配は無い。

緊張と興奮で心臓の鼓動が速くなる。バルバトスの体に、本人の許可なく傷をつけることの罪悪感も興奮材料の一つになっていた。

その興奮のまま、ソロモンはバルバトスに痕を付けた。

吸い上げた箇所は赤く染まり、そこは時間がたてば茶色く変色するだろう。確かに痕を残したという達成感と罪の意識で、頭の中がぐちゃぐちゃに掻き乱される。ソロモンはしばらくその光景を眺めた後、バルバトスの横に寝転がった。眠れそうにはないが、寝ていたという事実は作らなければならない。

翌日、柄になく取り乱したバルバトスに、「見られた」と顔を真っ赤にしながら苦情を言われるとは、このときのソロモンには想像することもできなかった。




おまけ
「あー、なんだ、もっと首元を締めた方がいいぞ」
「どうしてだい?」
「ここに痕が残ってる。大概の奴には見えない位置だが、見られたらあいつは気にするだろ」
「えっ、嘘だろ」
「こんなことで嘘ついてどうすんだ。にしても、珍しいな」
「…………ありがとう。全く見えないように締めておくよ」