飲酒モンモン

身動きもままならず、「大変なことになったなぁ」とぼんやり考えながら、バルバトスは目の前のお祭り騒ぎを眺めていた。

アジトの歓談室で行われている酒盛りで、無理矢理お酒を呑まさせられたソロモンと、呑まさせられそうになったシャックスを部屋の隅へ避難させたのがついさっきのこと。

初めての飲酒でふわふわとし始めたソロモンをソファに座らせ、介護していたまでは良い。話しかけていると、いつのまにかソロモンはバルバトスの膝を枕にして横になって寝始め、便乗したシャックスは肩を枕にして寝始めた。後から来たご機嫌なモラクスがなぜか目を輝かせ、ソロモンの尻を枕にして寝てしまったので、もうバルバトスは動けない。静かにブネに助けを求めたが、無視されてしまった。

参加したいと思いつつ、起こすのも忍びないので、部屋の喧騒を眺めるに留めた。酒、肉、と、ヴィータの欲に素直な宴である。ここに詩でもあればなお良いが、残念なことに、追放メギドたちにあまり詩は好まれなかった。

酒を持ってきてくれそうな雰囲気も無いため、シャックスを起こさないよう注意しながら視線を落とす。ソロモンは大口を開け、涎を垂らしながら寝ていた。穏やかな寝顔で、リラックスしているのが見て取れる。バルバトスは安堵で微笑んだ。

まだ年若いヴィータには酷なほどソロモンには辛い思いをさせている。どうしようもない事情があり、本人も意思を持って挑んでいるとは言え、少し心苦しい。せめて、夢の中くらいは穏やかでいてほしかった。

ソロモンの硬い髪の毛を指先で弄びながら、バルバトスは小さい声で歌い始める。先程からモラクスが寝ぼけてソロモンの太ももを叩いているにも関わらず、起きる気配がないので、この程度なら大丈夫だろう。

そんな穏やかな時間は、シャックスの落下によって終わりを告げた。

シャックスが肩から落ちてソロモンに衝突する。その衝突でソロモンは跳ね起き、連鎖的にモラクスも起きた。酒が入っているソロモンはまだ夢うつつだが、流石と言おうか、シャックスとモラクスはすでに覚醒している。

丁度良いと、バルバトスは口火を切った。

「さあ、そろそろ部屋に戻って眠るんだ。いいね?」

ソロモン以外からは素直に返事が返ってくる。そのまま二人は部屋に戻っていった。

バルバトスは困った顔をしながら、それでも、一片も嫌がらず、ソロモンの背に手を当て立たせた。甘えるように寄りかかってくるソロモンが愛らしく、頰にこっそりキスをする。

「ちゃんと立って歩くんだ。さすがに君を抱えて移動するのは辛いからね」
「んん……、わかった」

バルバトスはソロモンに肩を貸す。抱き寄せるようにもたれかかられ、少しばかり歩きづらい。それでも、彼の部屋までの間、珍しく甘えたなソロモンを独占できるのは特権だな、とバルバトスは小さな幸せを噛み締めていた。