運命の人 sideS
運命の人side Bのおまけですので、先にそちらをどうぞ
一目見た瞬間、彼女が運命の相手だとソロモンは確信した。頭を金槌で殴られたような衝撃が走り、心が彼女一色で塗りつぶされていくのを感じる。ハルマゲドンを止める辛い旅路の最中だったというのに、それすら忘れ去ってしまうほどの出来事だった。
彼女が同行すると決まるまでの僅かな間だったが、ソロモンはずっと浮き足立っていた。そして、その後、自分の感情の変化に恐れを感じるのだった。
ソロモンは、何かと気にかけてくれているバルバトスに淡い恋を抱き、苦労しながらも恋仲になっていた。その日々は、辛い現実を和らげてくれる確かな幸せにだったにも関わらず、取るに足らないちっぽけなものに感じる。心のどこか遠くに投げ捨ててしまっていた。
野営地で横になったまま思いつめていると、誰かにのしかかられて思考が中断された。目を開けてみると、自分の上に乗ったシャックスがじっとソロモンを見ていた。
「…………どうしたんだ?」
「モンモン、お疲れだね!」
「そりゃ、今日も大変だったからな」
「いやあ、それだけじゃないですな。モンモンが明らかに悶々としてるよ」
ソロモンの上に乗ったまま、シャックスは器用にポーチから干しきのこを取り出す。
「食べると悩みがふっとぶきのこだよ! とっておきだけどね、モンモンにはあげちゃう」
「怖いからいらない」
「えー、よく効くのに。じゃあ、バルバルの回復をキメちゃう?」
「仲間の援護を危ない物と同列に語るなよ……」
そうこうしているうちに、シャックスはブネに剥がされて連行されていった。ようやく重しが無くなり、ソロモンは安堵する。
急に襲ってきた眠気に身を委ねながら、2人っきりになれる機会があれば必ずバルバトスと話そう、とソロモンは決めるのだった。
2人っきりになれる機会は、結局、現在の案件が決着した後で、アジトへ帰る前に泊まった宿でのことだった。皆に頼んで同室をモラクスからバルバトスに変えてもらう。ことさらウェパルの視線が痛かった。
寝る用意を済ませた後、バルバトスはベッドに座るソロモンと向かい合うように、自分に割り当てられたベッドへ座った。
先に話し始めたのは、ソロモンに微笑みかけるバルバトスの方だった。
「俺に話があるんじゃないかな」
穏やかな口調だった。
ソロモンはバルバトスの視線がいたたまれなくなり、視線を外す。話の切り口が見つからず、何度も喋ろうとしては口を閉じることしかできなかった。
やがて、バルバトスが話を繋げた。
「彼女のことだろう?」
「……! わかるのか?」
「ああ、君を見ていればすぐにわかるよ。別れよう、ソロモン」
あまりにもあっさりとその言葉は紡がれた。
ソロモンはバルバトスに視線を戻す。その表情は変わらず笑顔だった。バルバトスが自分のことを語っているような、余裕すら感じられる。
「傍目からもわかるほど、情熱的な恋をされちゃ叶うはずがないさ。俺のことは気にしなくていい。君の感じる運命のまま突き進んでくれ」
ソロモンは何度も謝り続けた。