会話では聞き手に回ること
最近、何かとソロモンから話をねだられて、バルバトスは悪い気はしなかった。物語に触れる機会の少なかったソロモンは絶好の聴衆である。話している方も楽しい。そのため、バルバトスは寝る前の空き時間を利用して、ソロモンのためだけの席を用意していた。
ついでにソロモンを寝かしつけた後、バルバトスはホールへ向かった。カウンターには先客のパイモンがおり、バルバトスはグラスと新しいツマミを持ってその隣に座る。一言断りを入れてから酒とジュースを拝借してカクテルを作った。
「何だか機嫌が、って、どうしたんだ、そのイヤリング」
「これかい? ソロモンに貰ったんだよ」
開口一番にパイモンが訊いてきたのは、バルバトスの耳についているイヤリングだった。ソロモンから貰ったピアスを、穴が空いていないからと言う理由でイヤリングに改造してもらった品である。バルバトスは穴を空けると言ったのだが、これのためだけに空けるのをソロモンが嫌がったのだ。
「キミがソロモンに教えていた、あの店で買ってもらったんだよ」
口をぽっかり開けてパイモンは見てくる。何かおかしなことを言ったのかと考えるが、心当たりは無い。
「いや、そうか。ふーん、そうかそうか……」
「なんだか気味が悪い言い方だな……」
困惑しているパイモンにバルバトスも困惑してしまう。ソロモンがプレゼントを作るのではなく買うのは珍しいが、そこまでの反応をされるほどでは無い。
不思議に思いながらも、バルバトスは作ったカクテルを飲んだ。柑橘系の甘い酒で飲みやすい。初心者でも無理なく飲める一品だ。これで何人もの女の子を落としてきたのだろうことは想像に難くない。
「つかぬ事を訊くんだが、最近、当代が熱心に話を聞くようになっていないか?」
「ああ、よく頼まれるよ。さっきもソロモンの部屋で一席設けたところさ」
「そうか……、部屋で、か……」
「何の不都合があるんだ?」
眉を寄せて考え始めたパイモンに、バルバトスはやや引きながら対応する。そうは見えないが、そうとう酔っているのだろうか。
早めに逃げるか自分も酔っ払ってしまうか考えていると、悩み続けていたパイモンが吹っ切れたようにバルバトスを見てきた。それを受けて、バルバトスは無意識のうちに身構える。
「なあ、好きな物って何だ? 子どもでも用意し易いモノで頼むよ。行きたい場所でもいい」
「なんなんだい、急に」
急にそんなことを聞かれてもすぐには答えられない。バルバトスは頭を悩ませた。
酒は子どもには買いづらい。面白い物語はこれから知っていくことだ。武器や楽器の手入れの品も子どもには買うことは無理だろう。
「果物系のパイ、とか? 果物全般が好きだから、果物の種類は問わないよ」
「そうかそうか。いいことを聞いた。ありがとうな」
どこがいいことなのか分からないが、ウザ絡みされるのも嫌なため、バルバトスは深く追及しなかった。
イヤリングを外して無くさないように片付ける。これから酔っ払うことに決めたのだ。大切なものは片付けておくべきだ。
もう日付も変わったが、バルバトスはパイモンと共に飲み始めた。