ソロカス デートする話

にょたバルとにょたピに囲われているモンモンの話です。健全デート。

「おかしぃないな?」
「おかしくないよ」
「可愛えぇ?」
「はいはい、可愛いよ」
「ちょっ、ちゃんと見てぇや!」
「もー、見てるって」
 手を抜いた返事にカスピエルは苛立っていた。ソロモンとの大事なデートに着ていく服だ。完璧でないと意味がない。
 カスピエルが着ている服は、紫色のスカートに白いシャツ、ベージュのロングカーディガンというシンプルなデザインの服だった。靴はカーキ色のサンダルにする予定だ。
「かなり悩んで選んだ服だろ? 大丈夫だよ。それより、出たらどうだい? ソロモンを待たせたくないんだろ」
「うー、行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
 駆け足気味でカスピエルは家を出る。まだ十分間に合う時間だが、早く着くに越したことはない。それに、今回はワガママを言って、外での待ち合わせにしたのだ。絶対に遅れるわけにはいかない。
 待ち合わせ時間の30分前に着き、カスピエルはベンチに座ってソロモンを待った。今頃、ソロモンは漫画喫茶あたりで時間を潰している頃だろう。待ち合わせ時間が来るのが楽しみである。
 無事に着いて安心し、カスピエルは大きな欠伸を一つした。仕事が終わり、仮眠しかしないままここにいる。少しばかり眠たい。
 SNSのチェックをしながら時間を潰し、10分程経ったころ、ソロモンが走ってこちらへと向かってきた。カスピエルは飛び跳ねるように立ち上がる。
 ソロモンはよほど急いだらしく、息を切らしていた。
「ソロモン、どないしたん?」
「いるのが、見えた、から」
「ゆっくりでえぇで」
「ありがと。……ふぅ、ごめん、待たせたかな」
「そんなことあらへん! 俺が早よう来すぎただけや!」
 謝るソロモンに慌ててカスピエルは訂正を入れる。自分が勝手に約束の時間の30分前に来たのだ、ソロモンが罪悪感を覚える必要は無い。
 ソロモンの頰がだらしなく緩んだ。それにつられてカスピエルの頰も緩んでしまう。
「ありがとう。行こうか、カスピエル」
「うん」
 向かう場所は大規模な祭の会場だ。そのため、観光客も多く、二人は人の流れに乗りながら歩いた。
「カスピエル、今日の服は初めて着たやつ?」
「せ、せやで」
「やっぱり、初めて見るなと思ったから。似合ってる」
「ホンマ? 嬉しぃなぁ」
 そう言われると、一生懸命選んだ甲斐があるというものである。ソロモンの腕に自分の腕を絡ませながら、カスピエルはニヤケ面を抑えきれなかった。
 会場に着くと、出し物を見ながらソロモンは出店の食べ物を次々と買っていった。全てを平らげるその姿に、カスピエルは20歳そこそこの男性の食欲に目を丸くする。同時に、とても愛おしく感じた。
 ソロモンが買った食べ物を一緒に摘んでいるうちに、カスピエルの腹も満たされていく。休憩にと立ち寄った公園のベンチに並んで座ると、どっと力が抜けるのだった。
「カフェ、全滅だったな」
「せやね、みんな考えること一緒やわ」
 氷水で冷やされたペットボトルのお茶をカスピエルは飲む。お茶は歩き回って疲れた体によく染みた。
 この後は、祭をもう少し見て回り、デパートへ寄って買い物をする予定である。ソロモンには内緒にしていたが、そこでソロモンの服を見繕ってプレゼントし、次のデートへ繋げようとしていた。金のかかるデートを遠慮してしまうソロモンだったが、衣装を用意して外堀を埋めてしまえば、断ることはできないだろう。
 そんな謙虚なところもええんやけどな、とカスピエルは微笑んだ。この恋人はとても可愛らしい。そして、そのままうとうとと眠りについてしまった。
 次に目が覚めたとき、空は茜色に染まっていた。
「へっ、もうこんな時間?」
 ベンチでソロモンにもたれかかって寝ていたカスピエルは飛び起きる。人は少なくなっており、閑散とし始めていた。
「よく寝れた?」
 何事もなかったようにソロモンが聞いてくる。
「寝れた。あのな、俺……」
「ごめんな。気持ち良さそうに寝てたから起こせなくて。今日もずっと眠そうだったし」
「気づいてたん?」
「…………うん」
 カスピエルの胸に後悔が襲いかかってくる、実際にはそんな時間はなかったのだが、早く寝ていれば良かったのにと思わずにはいられない。
 ソロモンはカスピエルの手を取って立ち上がった。
「暗くなってきたし、帰ろう。晩御飯は何がいいかな?」
「……カレー」
 しょんぼりと項垂れながらカスピエルはソロモンの後を着いていく。
「カレーか……」
「ダメなん?」
「ダメじゃないんだけど、二人分となると量がな。……バルバトスには外泊するよう頼んでいるんだ」
「それって」
 二人っきりと言うことか。
 生活サイクルの都合上、ソロモンといるときは家にバルバトスがいることが多かった。バルバトスはカスピエルにとってもはや空気みたいなものなので気にしたことはなかったが、よく考えると家で二人っきりのときは無い。
 カスピエルはソロモンの顔を見た。顔が赤いのは夕日のせいなのか。
「映画とか見たりして、デートの続きをしよう。ダメかな?」
「そんなことない! めっちゃ嬉しい」
 先程までの足取りの重さは何処へやら、カスピエルはまるで羽が生えたかのように体が軽くなっていった。
 映画を見て、それから何をしようか。カスピエルの妄想は止まることがなかった。