酔っ払いとその末路
バルバルとモンモンが付き合ってるよ!
三人称や口調違いがあったらごめんなさい。
深夜の酒場で、ソロモンはモラクスと一緒に目の前の光景を呆然と眺めていた。珍しくブネとバルバトスとマルコシアスが酔い潰れている。やたらと盛り上がっているな、とは感じていたが、ここまでとは思いもしなかった。
「どうする、アニキ」
「放っておくわけにもいかないだろ」
ソロモンはため息をついた。放っておいても大丈夫そうな3人だが、そうもいかないだろう。
問題は、ここにはソロモンとモラクスしかいないことだ。ガープは初めから参加しておらず、シャックスはいつのまにか帰っていた。ウェパルは面倒だからと先程逃げたばかりだ。どうやって酔っ払い3人を部屋に戻すか検討もつかない。
「モラクスは誰まで運べるか?」
「バルバトスまでなら。いや、やっぱ無理だ。脚を引きずっちまう。マルコシアスならなんとか……」
「俺はバルバトスまでなら……」
取り敢えずブネは無理、と言うことで話がついた。
ソロモンはモラクスにガープを呼んできてもらい、その間、酔っ払いを見張りつつブネを起こすことにした。
「ブネ、起きろ、ブネ」
揺すったり、氷の残ったグラスを押し付けたりしたが、ブネは起きる気配がない。そうこうしているうちに、不機嫌そうなガープを連れてモラクスが戻ってきた。
「2人とも、しゃがめ」
道すがらモラクスから事情を聞いていたらしく、ガープはソロモンから部屋の鍵を受け取ると、手際よくバルバトスとマルコシアスをそれぞれソロモンとモラクスの背に乗せていった。
酒の匂いがぷんと漂い、ソロモンは顔をしかめる。それはモラクスも同様だった。
「くっさ!」
「まったく、情けない。おい、早く終わらせるぞ」
ブネを背負ったガープに続き、ソロモンとモラクスも後に続く。前後の背負われた人の足先が地面で擦られているのは気にしないこととした。
宿の部屋の前に着き、ガープはブネを背負ったまま、器用にソロモンとモラクスの部屋の鍵を開ける。その鍵をソロモンに咥えさせると、自分は自室へ戻っていく。女子部屋の戸を蹴りながら開けろと要求するモラクスを横目で見ながら、ソロモンは部屋に入った。本来ならバルバトスはガープと同室だが、酔っ払いの面倒を1人で2人分見させるのは酷だろう。
しばし悩んで、自分のベッドの上にバルバトスを転がす。床の上に放置しても良いのだが、さすがに良心が咎めた。
ソロモンは聞き耳を立て、廊下の様子を探る。マルコシアスとモラクスの声が聞こえてくる。モラクスが帰ってくるにはまだ時間がかかりそうだ。
ベッドに腰をかけ覆い被さるようにしてバルバトスの寝顔を見る。心臓が煩いほど存在を主張していた。
元々顔立ちが整っているバルバトスは、起きているときのナルシスト言動が無ければただ美しかった。長い睫毛に柔らかそうな唇。作り物めいた美しさすらありそうだが、確かに生きていると感じさせる。
ソロモンは小さく深呼吸し、己の欲求のまま唇を重ねる。恋人同士だ。寝入っているときにキスしても大丈夫だろう。
名残惜しく思いながら離れると、バルバトスの瞳が目に映り込んだ。
「情熱的だね」
にやにやと笑うバルバトスは、ソロモンの頭の後ろに手を回し、抱き寄せた。上機嫌で頭を撫でている。どうやらまだ酔っ払っているようだ。
「放せよ」
「どうしてだい? 可愛い恋人が、可愛いことをしてくれたんだ。放したくないなぁ」
バルバトスがソロモンの顔の輪郭に沿うように撫で、頰を両手で挟んだ。熱っぽい視線に絡みとられ、ソロモンは動けなくなる。先程までとは一変して妖艶な笑みに、ソロモンは自分の中の欲が燃え上がり始めるのを感じた。
モラクスが、と自分の中でブレーキをかけようとするが、歯止めがかかりそうにない。
「満更じゃないんだろう、君も」
世界が反転した。バルバトスの体重が下半身に乗る。長い金髪は重力に従い、こちらに倒れ落ちていた。
ソロモンはバルバトスの腰に手を添えた。
「アニキぃ……、疲れた……」
そのモラクスの声が聞こえると同時にドアが開かれる寸前、バルバトスはソロモンの上に倒れこんだ。必死で狸寝入りしている。
部屋の惨状を見たモラクスは、疲れをにじませながら、憐れみの表情を見せた。
「アニキもかよ。ろくなもんじゃねぇな、酔っ払い」
モラクスはバルバトスの背を掴んで床に投げ落とした。バルバトスから潰れたカエルのような唸り声が発せられる。
バルバトスが跳ね起きた。
「いてて、酷いじゃないか」
「酔っ払いなのが悪いんだろ。アニキと俺はもう寝るから、そこで寝てろ」
「床で?」
「おう」
「ひどい……」
「まあまあ、モラクス」
ソロモンは起き上がり、ベッドから離れた。モラクスの方のベッドに腰掛ける。
「モラクス、俺と一緒に寝ないか? バルバトスは俺のベッドで寝ればいいよ」
「ホントか、アニキ!」
喜色満面のモラクスに、この案は自然と決定となる。
その後、トイレに行くと言って部屋を出たソロモンは、近いからと言って1人の時間をもぎ取り、廊下で安堵のため息をつく。
体を冷まさないと、とてもではないが寝られる状況ではない。