若気の至り1

若気の至りで押し倒しちゃうソロバルです。SSで、本番は無しです。
バルバルはえっちなお兄さん。

気づいたときには、バルバトスは天井に顔を向けさせられていた。

目に映るのはソロモンの上気した頰と、熱がこもりやや焦点の合っていない瞳。拘束された手首にのしかかる鈍い痛みと、伝わる震え。それらがベッドの上で繰り広げられていることと合わせると、何が起きているのかはすぐにわかる。加えてここはソロモンの自室だ。

バルバトスがソロモンのアジトの自室に来た理由は、シャックスにすら心配されるほど様子のおかしかったソロモンを労わるためだった。連日の戦いで張り詰めた精神を癒すには、詩を聴くことが良いだろう、と、気のいいお兄さん風で部屋に入り、寝付くまで歌う予定だった。しかし、今回はいつもとは別の方向に精神の昂りが向かったようで、明らかな情欲の目が向けられている。。

バルバトスは考えを巡らせる。今から、どういう言動をすれば正しいのか、と。

今は欲に支配されているが、冷静になったとき、心優しい彼は自分の行いを悔い、深く傷つくだろう。そうなってしまうのは不本意だ。

「バルバトス……」

ねだるようにソロモンがバルバトスの名前を呼ぶ。バルバトスは微笑み返し、瞼を閉じた。すぐに、押し付けるだけの拙いキスが降りかかる。その拙さが愛おしかった。口を薄く開き、舌先で擽ぐると、弾けるように離れていった。目を開き、映るその表情に頰が緩む。

傷つかないようにソロモンを導くしかない。

きゅっと口を結んだソロモンはバルバトスの手を放し、代わりに顔の横に手を付き、顔を近づけて唇に頰に瞼にキスをしていく。

くすぐったさに笑ってしまいそうになるのをこらえながら、バルバトスはソロモンの背に手を回し、優しく撫でた。それに合わせ、ソロモンのからだがピクリと揺れる。

キスを止め、手を震わせながらも、ソロモンはバルバトスのジャボを外した。バルバトスの首元が空気に晒され、熱い視線が注がれる。そのまま上着の前が開かれ、引き締まった肉体が晒された。

普段晒されることのないバルバトスの肌を見て、ソロモンの瞳の欲の色が濃くなる。その様に、バルバトスの頭は、強い酒を呑んだときのように何も考えられず、思考がとろけた。

これからされるだろうことがすぐさま頭の中で展開され、バルバトスは我に返る。このままでいれば、間違いなく勢いのまま体を重ねるだろう。それは間違いなく幸福な時間となる。問題はその後だ。

「ソロモン、ここまでた。こらから先は、まだ俺たちの関係じゃダメだろう?」

年長者として、諭すようにバルバトスは言う。

すぐさま言葉の意味を理解し、顔を青くしたソロモンがバルバトスから離れる。

バルバトスは体を起こして近寄り、ソロモンの両手を手で包んだ。

「逃げないで」
「あ……、ごめん! バルバトス。俺は、こんな酷いことを……」
「おっと、今、聞きたいのはそれじゃないな」

バルバトスはソロモンの肩を抱き寄せる。ソロモンの息が肌に触れた。

「確かに、いきなり押し倒すのは感心しないけど、そのお説教は後だ。君がこんなことをした理由を俺は聞きたい。あるんだろう? 君が無闇矢鱈とこんなことをするとは思えないからね」

「俺、は。……バルバトスが、好きだ。いつも気にかけてくれて、気の置けない距離で。いつの間にかとても。でも、今日はそれだけじゃなくて、すごく……」
「すごく?」
「……抱きたい」

答える声はだんだんと小さくなっていった。

最後の言葉を聞き、バルバトスはソロモンの顔を上げさせた。視線が交わる。

「よく言えたね。……俺も君のことが好きだよ」

バルバトスは彼の名前を呼ぶ。ソロモンの目が大きく見開かれた。

「だから行為自体に問題はない。次からは、行動を起こす前に言うんだ。いいね?」

ソロモンが小さく頷く。

ソロモンがその後紡ぐ言葉を予想して、それを封じるためにバルバトスはソロモンにキスをした。おそらく、ソロモンはけじめをつけるために、今日は一旦このままやめようとするだろう。それでは体に燻る熱の行き場が無くなってしまう。

バルバトスはソロモンの顔から手を放し、手首を掴んで手のひらを自分の胸に押し付ける。ソロモンの熱い手に、バルバトスの鼓動が伝わっていった。

「心臓の鼓動が早いのはわかるかな?」

ソロモンは再び頷く。

「途中で止めはしたけど、俺もたまらなく君が欲しいんだ。まさか、やめるなんて言わないだろ?」

甘く低く囁く。

ソロモンは酸欠の魚のように口をパクパクと閉じ開きさせると、ようやく息を大きく吸い、口を開いた。

「やめたくない、バルバトス」
「ありがとう。さあ、再開しようか」

胸に押し当てていた手のひらに口付けを落とした。それを切っ掛けにソロモンが身を乗り出し、バルバトスの上着を脱がして放り投げる。

バルバトスは再び天井に向くこととなった。